e-春風塾

【高専レポ②シリーズ】ほっしー先生「大事なのはその場所でどんな人と出会うか」

 高専進学への興味が塾内で高まっている中、皆さんに「高専ってどんなところ?」ということを知ってもらうべく、実際に高専を卒業された先生がたのお話を聞いていく高専レポシリーズ。前回のべーやん先生に続き、第二回目となる今回は、ほっしー先生こと、星出遼汰郎先生にお話を聞いて来ました!

べーやん先生にお話を聞いた記事はこちら♪↓

 ほっしー先生はべーやん先生と同じく大島商船高専を卒業後、島根大学数学科、九州大学大学院数理学府への進学を経て、現在はe-春風塾の講師として活躍しています。

―高専を目指したきっかけは何だったんですか?

「僕は中学生の時、正直学校や勉強があまり好きではなかったんです。大学進学にも興味がないし、早く就職したいなと思っていました。その時に、父親から『高専は就職率が高い』と聞いて。5年制で少し長いけれど、普通の高校に行って大学に進んでから就職するよりは早いし、じゃあ行ってみようと思ったのがきっかけです。ただ、中学の成績はあまり良くなかったので、一般入試で受験しました。」

―受験対策はどのようにしていましたか?以前の取材で、高専の入試対策はとにかく過去問を解く!というお話を聞いたことがあるのですが…。

「間違いないと思います。僕は当時近所の小さい私塾に通っていたんですが、その塾には僕と同じように高専を目指している生徒が何人かいたので、先生が通常授業の後に高専対策をやってくれていました。そこでも、とにかく過去問を沢山解けという趣旨のことはよく言われましたね」

―高専の問題は普通の高校入試の問題と毛色が違うと聞きますが、本当ですか?

「はい。普通の高校入試の問題は基本的な計算力を問う傾向が強くて、解けることを前提に、どれだけ早く解けるかを求める問題が多いんですが、高専の問題では発想力や思考力が問われます。例えば、掛け算そのものは皆分かっているけど、そのひっ算の仕方を思いついてください、みたいな(笑)。ただ公式を覚えているだけではだめで、その式をどうやって使うか、どう考えるか、という部分が大事になってきますね。『〇〇系の問題はこういう式を立てましょう』といった具合で、考え方までセットで覚えるのではなくて、その考え方を自分で思いつけるかどうか、ということです。かなり難しいですが、面白い問題が多いなと思いますよ。今でも趣味で『今年はこんな問題が出たのか』と見ることもあります」

―応用力が一般の高校以上に求められるということですね。実際に高専に入ってみて、どんな印象を受けましたか?

「僕は最初からパソコンに興味があったわけではなかったので、正直なことを言うと授業も分からないし、あんまり楽しめなかったんです。プログラミングも最初の2年間は学問的な面白さを理解できなくて、部活にも特に入っていませんでした。周りもそんな感じで、最初から楽しんでいる人は少なかったんじゃないかなと思います。ただ、自由な校風は良いなと思いましたね。縛られている感じはなくて、のびのびした環境で。それは自分に合っていたなと思います」

―そうだったんですね。そのあとパソコンやプログラミングに興味を持ったのには、何かきっかけがあったんですか?

「はい。2年生の途中、同じクラスで席が近かったべーやん先生に、たまたまプログラミングの本を貸してもらったことがあって。その本を読んだら、今まで授業で分からなかったことが、どういう理論や仕組みだったのか一気に理解できるようになったんです。そこからプログラミングを面白いと思えるようになって、興味を持ちました。そのあと、コンピューター部にべーやん先生がいると知って、僕もやってみたいと思って入部しました」

―なんだか運命的な出会いみたいですね!コンピューター部の活動の中で、印象的だった思い出はありますか?

「べーやん先生と一緒に二人で出場した、初めての高専プロコン(正式名称:全国高等専門学校プログラミングコンテスト)は印象に残っていますね。放課後夜遅くまでべーやん先生と一緒に残ってパソコンに向き合っていました。半年の期間にわたって大きなプログラムを作ること自体が初めてだったんですが、それがとても楽しかったんです。プログラミングをすべて理解していたわけではなかったので、べーやん先生に言われた作業を黙々と熟していくことも多かったんですが、没頭して画面に向き合っているのがなんか心地よくて。『よく分からないけど楽しそう!』と思って取り組めたのは、良い刺激になりましたね」

―素敵な経験ですね。分からないけど楽しい!という感覚は、何につけても大切な気持ちだと思います。

「そうですね。この経験は何をするにしても、今の自分の原体験になっているなと感じます。塾で生徒さんたちに教える時にも、この感覚はかなり大事にしているところです。『よく分からんけどわくわくする!』という感覚を持ってくれているなと感じる生徒さんには、少し専門的で難しい内容まで説明したり、理論的なことも教えてあげたり。そうやって、このわくわくした感情をできるだけ後押しして、伸ばしてあげられるようにしています。もちろん万人に刺さるものではないと思いますが、刺さる人にはものすごく良い刺激になるんじゃないかな」

―高専は卒業するために卒業研究をするんですよね。当時のほっしー先生はどんな研究をしていたんですか?

「卒研はプログラミングからちょっと離れて、数学の題材を取り上げました。具体的には、折り紙を使って高次方程式が解けることを証明しました。直線と曲線だけだと4次方程式までしか解けないんですが、折り紙の『折り返す』という動作を式で表すと5次方程式を解くことができるという先行研究があって。僕はそれを応用して、7次方程式や9次方程式、さらにもっと高次の方程式まで解けるという理論を証明しました」

―ちょっと次元が高すぎてイメージが付きづらいですが…!すごいですね。そのテーマはどうやって設定したんですか?
「僕が当時もともと方程式に興味があったこともあって、それを知った担当の教授が『こんなテーマがあるからやってみない?』と提案してくれたんです。研究テーマとしては色物というか、主流なものではなくて、扱っているのが日本に僕ともう一人しかいないというレベルのものだったんですが、その分最先端に触れることができて。『今このテーマを扱っているのは僕だけなんだ!』という、誰もやっていないものを研究している楽しさを感じることができたのは、かなり良い刺激になりました」

―お話を聞いていると、ほっしー先生には高専の環境がとても合っていたのではないかと感じますが、実際はどうでしたか?

「そうですね。これは人によって良し悪しあるとは思いますが、閉じこもった狭い世界で勉強できていたのは、僕にとっては良かったなと思います。自分の中に考え方や価値観の軸がないと、周囲から様々な刺激を受けた時に簡単にぶれてしまうんですよね。そういう意味で、『こんな感じで自分は生きて行くんだ!』という、人生の軸ができたのは良い経験だったなと」

―自分の中に確固たる価値観があるというのは、社会に出るにあたって重要なことですよね。逆に、経験しておきたかったな、やっておけば良かったなと思うことは何かありますか?

「はい。さっき言ったように、好きなものに囲まれた環境で軸を作れたのは良かったんですが…その分、そうじゃない生き方はもうできないな、とは思います。広い視点で世の中を見て、色んな人と会って色んな価値観を吸収して、というのは、今はもうかなり意識的に行動しないと難しいです。その点で、就活とか面接はやってみたかったな。広い世界の中に自分がどういうポジションにいて、どんな特性を持っているのかを客観視させられるタイミングが、高専にいる間はほとんどなかったんです。今でこそ会社を運営しているから、自分はどんなところが周りに対して優位かを考える機会はありますけど。自己分析をして見つめ直す、自分について考える、という経験は、やっておけば良かったなと思うことがあります」

―なるほど、一長一短ですね…。ただ、どういう環境に身を置くかを考えるのは、高専に進むかどうかを決める一つの判断軸になりそうですね。

「そうですね。これはどっちが良い悪いではなくて、進学する本人がどこに惹かれるかが大事かなと思います。僕自身も、高専そのものが良かったというより、高専で出会った人が良かったからこそ、色んな経験ができたと思っています。重要なのはそこにどんな人がいるか、どんな付き合いができるかです。ただ、高専は似たような考え方や趣味を持った人が集まりやすい場所ではあるので、良い人を見極めたい、人に恵まれたいと思っている人にはおすすめしたいですね」

―最後に、高専を目指す生徒の皆さんに向けて、メッセージをお願いします!

「理想の高校生活は狙ってどうにかできるものではないですが、希望する学校に入れるかどうかは自分で狙って掴み取ることができます。目標にたどり着けるかは皆さんの努力次第です。頑張ってください!」

―ほっしー先生、ありがとうございました!

残り1名の講師の方へのインタビューは後日公開予定です!お楽しみに!

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