プロフィール
星出遼汰郎
「早く就職したい」という思いで高専に進学後、プログラミングに目覚める。全国高専プロコン特別賞、mashup award2017 KOSEN賞を受賞。高専時代の後半には、プログラミングを通して数学に興味を持ち、島根大学数学科に編入。2年間数学の勉強をした後、2021年より、九州大学大学院数理学府に進学。専門は抽象代数学。
ーほっしー先生が九州大学まで来るようになるまでのストーリーを教えてください。
はい。僕の実家は山口県にあります。父親は公務員をやってますが、地域創生をいち早く手掛けるなど、公務員の中ではかなり新しいもの好きです。僕自身は回りと比べて「少し変わった」子どもで、学校の先生からはたくさん怒られるし、学校の宿題は全くやらないしでしたが、父親はそんな僕に理解があって、自分に合う道を行って欲しいと接してくれていました。それで中学生の時に、『13歳のハローワーク』という本を親から渡されたんです。「この中から、好きな仕事ある?」と聞かれました。「興味ないなぁ」と思いながらも一応目次をめくってみると、「ゲームプログラマー」という文字が目に飛び込んできました。それに妙に感動を覚えて、「これに興味ある!」と答えたんです。それを受けて父親が、「高専がある」という話を持ってきて、地元の高専の情報工学科を受験するようになりました。今思うと、僕はそんなにゲームをしているわけじゃないのに、ゲームプログラマーという単語に惹かれたのは不思議だったんですけども。
ーそれはなんで惹かれたんでしょう?ゲームをしているわけでもないのに。
うーん、幼稚園の頃から、「自分でおもちゃを作ってみたい」と思っていたんですね。人が作ったおもちゃって、なんだかんだ遊び方が決まっちゃってますけど、自分でおもちゃを作れば、自分で遊び方を決められる、と幼心に思っていたんですね。
九州大学に来るまでのプロセスでも、「自分でおもちゃを作ってみたい」の精神は発揮しているかもしれません。自分が爆発的に実力がついた時期があるのですが、高専2年の頃、後ろになった席の子から、プログラミングの本を借りたんです。それがすっごく面白くって。僕は高専入学後も決して成績が上位ではなかったのですが(笑)、その本に出会ってみるみる学業への態度も変わりました。一気に成績上位に(笑)。その本を貸してくれたクラスメイトは卒業までずっと一位の成績の子でしたが、結局その子に誘われて、全国高専プログラミングコンテストに2年連続で出場するようになります。2年目にはVR映像と送風機の制御を組み合わせて仮想世界でパラグライダーを体験できるシステムを構築し、課題部門特別賞を受賞しました。仲間と一緒に楽しいものを作っていくプロセスがとても楽しくて、プログラミングの力が一気についたんです。仲間と環境のおかげですね。
ー大学では数学科に編入学していますよね。そのあたりの専門性の話を詳しく教えてください。
高専でもう一回、ブレークスルーした時期があったんです。高専4年の夏休みに、友達と二人で、青春18切符で旅行したんです。その旅行自体は楽しかったんですが、いかんせん、青春18切符って、移動が暇なんですよね(笑)。鈍行列車なので。電車に乗ってぼーっと移動している時に、ふと、学校での直近の数学の授業でやった「テイラー展開」について思い出したんです。学校だと、数式だけ教えてもらったんですが、そもそもなんでそういう数式になるのか?という問いが浮かんできて。どんどん気になっちゃって、当時持ち始めたばかりのスマートフォンで「テイラー展開」についての検索を始めたんです。そうするとインターネット上に詳しい情報が出てきて、読みふけってしまって。この旅の列車の途上で、 数学にハマってしまって。それ以降は独学で、インターネットで色々調べたり、自分で本を探し出してきて借りてきたりして、加速的に数学を探究し始めました。高専の最終学年を迎えても探究意欲が衰えなくて、「もう少し勉強しよう」ということで、大学への編入学を決めます。大学の後期課程から編入学して勉強しても、「まだまだ勉強したいぞ」ということで、大学院も進学しようと決めて、縁があって九州大学に来るようになりました。一応、専門は抽象代数学で、KENという言語体系を探究しています。
ー個性が開発されていくプロセスがとても興味深いです。独自の経歴が、ほっしー先生が手掛ける教育にも活かされそうですね。最後に、春風塾で追求したい教育のあり方について、教えてください。
そうですね、そもそも僕の数学での専門もそうなのですが、役に立つかわからないけれど、それでも結果として何かの役に立つようなことを、面白がってやることが大事だと思ってます。一部の人が面白がって作ったインターネットがここまで世界を変えましたから。プログラミングを教えていこうと思ってますが、まずは子どもたちが楽しくプログラミングして、親しんでほしいですね。スキルとしては間違いなく今後社会に求められるものですが、その根幹には、楽しくやること、楽しくやることによって生まれるアイデアがあるので。スキルだけあってアイデアがない人ではなく、スキルもアイデアもある、世界を変えられるような面白い人が出てきてくれたら嬉しいですね。
プログラミングという技術だけではなく、根幹となっている数学の原理まで教えられたら、将来的には面白いなと思っているんですけどね。今授業を受けてくれる子たちが成長したら、そういう話もしていけたらと思っていますね。
ーほっしー先生、ありがとうございました!
ほっしー先生は現在、小学生向けのプログラミング教室を開講しています。
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